鹿児島県熊毛郡屋久島町の屋久島徳州会病院様

登録日:2012年5月19日

空港に降り立つと、ひんやりとした雨上りの空気が頬を撫でる。「ひと月に35日は雨が降る」といわれる島。当然、今日も雨に違いない───そう思った瞬間、日差しが強くなり、あっという間に雲ひとつない空が広がった。うれしい誤算だ。
 「山のこちら側と向こう側では天気が違うんですよ。こちらが晴れていても、山の向こうは雨が降っている。この島ではそう珍しくないことです」
 屋久島徳洲会病院の放射線科、平尾技師長が話してくださった。島の真ん中にそびえる九州最高峰の宮之浦岳(1936m)をはじめ、九州の高峰上位7位までがこの島に集中している。1000mを超す山々だけでも46座。この地形が、独特の気候をもたらすのだろう。

屋久島空港  

 「やっぱり屋久杉だね、屋久杉は日本一だよ」
 屋久島の一番は?との問いに、平尾さんはまっすぐな眼差しで答えてくれた。
 「屋久杉は、他の杉とは質が違う。油分が多いから枯れにくく、腐りにくい。成長が遅いので年輪の間隔が狭く、木目が細かい。年輪の黒い部分が冬で、白い部分が夏なんだよ」
 見上げると天まで届きそうな、まっすぐに伸びた屋久杉に一瞬で心を奪われた。樹齢千年以上の杉の木を「屋久杉」と呼び、千年未満を「小杉」と呼ぶそうだ。米がとれなかったこの島では、年貢として屋久杉を島津藩に献上したという。江戸時代には盛んに伐採されたが、現在は禁止され、倒木や切り株、かつて捨てられた「土埋木」だけが工芸品として加工される。
 現在、年に2度だけ屋久杉の競りが行われていて、全国から業者が買い付けに来るそうだ。しかし、2年後にはその競りもなくなることが決まっている。材木としての屋久杉は持ち出し禁止となるため、工芸品しか購入できなくなるという。
 平尾さんがご趣味でお持ちの、加工前の屋久杉を見せていただいた。2年後にはきっと貴重なものになるに違いない。また、お世話になった民宿の食堂には、屋久杉を使った立派なテーブルがあった。大人6人がかりで運んだそうだ。やはり細かな年輪が刻まれ、美しい木目を楽しませてくれた。

屋久杉で作られたテーブル  

 屋久島徳洲会病院は、この島で唯一の総合病院である。同病院ができる以前は、診療所はあったものの、鹿児島市内の病院に行くことも少なくなかっただろう。10年間の誘致運動の末、島民99%の署名を集め、1997年7月に開院となった。現在は、一般的な疾患からほとんどの急性重症患者さんまでカバーできるという。島民念願の総合病院が、この自然に満ち溢れた癒しの島に誕生したのである。病院の窓からは、美しい東シナ海や屋久島の高峰を望むことができる。まるで高級リゾートホテルのようだ。

屋久島徳洲会病院 外観 病院駐車場からの景色

 同病院も「医師不足」とはいうものの、他の離島の病院ほど深刻な問題ではないそうだ。医師の多くが島内に住んでいることに加え、週の半分働いて週の半分は趣味に費やす、といったパート的な勤務も認められているという。また徳洲会グループには「トラベルナース」という制度があり、半年以上の勤務を条件に勤務先を選択できる。離島に多くの病院を構える徳洲会グループならではの、素敵な制度だ。

 屋久島の人口は1万4千人。一方で、訪れる観光客は年間40万人にものぼる。「一度は訪れてみたい島」という以前からの人気に加え、世界自然遺産への登録や「もののけ姫の森」としての人気で、この島は多くの観光客の心を捉えて離さない。
 「島には、年間で41万4千人がいる。住民か観光客かを問わず、病人やケガ人が出れば診ることになるんです」
 救急患者の受け入れは、この島では徳洲会病院が唯一となる。年間600人ほどが救急で運ばれてくる。月にすると平均50件。そこには、多くの観光客も含まれる。海や山での事故に加え、レンタカーでの交通事故も多いそうだ。救急患者の治療が優先されるため、一般患者さんの診療にもおのずと影響が出る。
一方で、ヘリコプターでの患者搬送は年間わずか20件ほど。ほとんどの治療が同病院内で完結できる設備と人材が整っていることがうかがわれる。

 同病院に導入いただいた弊社のシステムは、PACS(ShadeQuest/Serv)、Report(ShadeQuest/Report)の構成で、横河医療ソリューションズのパッケージを核にIntegrate-Q(中小規模のお客様向けの運用に最適化されたシステム)の構築を行った。
 「システム導入当初は、ビューア操作についての問い合わせが多かった。横河ビューアは、良くも悪くも多機能すぎて覚えるのが大変だったよ」。そして「良い部分を褒めるのは簡単だからね!」と激励の言葉をいただいた。

 放射線科エリアは、美しいたくさんの風景写真が飾られた癒しの空間だ。弊社のシステム・エンジニアがそれらを眺めていると「キレイやろ~。好きなものを持って行っていいよ」と声をかけてくださった。弊社と同病院の良好な関係が垣間見えた気がする。放射線科の皆さんが屋久島を撮影した写真も見せていただいた。中には、種子島でのロケット打ち上げを屋久島から写した貴重な写真もあった。
 「うちには、子どもがもらってきた鶴瓶さんのサインがあるんですよ」
 立石技師が笑顔で話してくれた。屋久島を訪れた笑福亭鶴瓶さんが、宮之浦小学校の生徒約240名全員にサインをプレゼントする光景は、先月(4月)テレビ放映され、私もうらやましく見た記憶がある。癒しの島で育った子どもたちの笑顔が、鶴瓶さんに多くのサインを決意させたのではないだろうか。

平尾技師長 立石技師

 車で島内を移動すると、あたりまえのようにヤクシカやヤクザルが道路を横切る。ウミガメが産卵のため上陸する浜辺も通過した。ほんとうに自然豊かな島である。そして食いしんぼうの私を裏切らず、新鮮な魚も豊富だ。代表的な味覚は、ヤクサバ、トビウオ、ミズイカ。山では南国果実のパッション・フルーツやマンゴーがたわわに実り、冬にはポンカン、タンカンなどの高級みかんも収穫される。そして何より有名なのは、三岳酒造で製造される芋焼酎「三岳」。福岡でもあまりお目にかかることはない。
 三岳を堪能するため伺った居酒屋には、トビウオのつけ揚げ、キビナゴの天ぷら、そして「首折れサバ」の刺身があった。首折れサバとは、獲れたてのサバの首を折って血を抜き、鮮度を保ったサバのことだそうで、その白子までが皿にのぼる。サバの白子を食べる経験は、なかなかできないだろう。全てとても美味で、くせがなく飲みやすい三岳によくあった。贅沢かもしれないが、次回はぜひ焼いた「首折れサバ」を食べてみたい。

ヤクザル 刺身(首折れサバ・ミズイカ)

 山と海に囲まれたこの島には、癒しを求めて毎年大勢の観光客が押し寄せる。登山客の中には、赤ちゃんを抱いてサンダル履きで来る女性や、慣れない運転で山道を走り回る人もいるそうだ。「バスをバックさせちゃった」と自慢げに笑う観光客さえいたという。
 注意していても事故は起こる。まして不注意が原因で事故を起こし、この島の医療に負担を強いるようなことは、あってはならないと思う。救急患者の受け入れ態勢が整っている同病院があるからこそ、観光客もまた安心して屋久島を訪れることができるのだ。その意味でも同病院は、この島に欠かせないものだと強く感じた。

千年杉 屋久杉

 島を訪れるときは、この美しい島を守ってきた人たちの生活を脅かさない、最低限の礼儀と心配りが必要なのではないだろうか。観光客の一人一人が、島の自然とここに暮らす人々への配慮を忘れずに、足を運んでくれることを願わずにはいられない。

<福岡営業所 高橋理恵 取材日:2012年5月9日>